スピッツ@さいたまスーパーアリーナ

凄くいいライブだった。個人的には今まで見たスピッツのライブの中で一番良かった。

# ネタバレしてます。大阪公演もあるので注意。


俺は常々スピッツの「需要と供給のバランスが取れてない」ところが気になっていたし、メンバーがアリーナじゃなくてホールにこだわっていたところも余り好きじゃなかった。「見たい人がいっぱいいるんだからデカいところでやればいいじゃん」「『ホールじゃないと伝わらないバンド』じゃないでしょう?」と。今日のライブは実際そのとおりで、きちんとアリーナの隅々まで伝わるライブだったんじゃないかと思う。

アリーナライブでよくある【なんか向こうの方でライブやってんなあ】感も無かった。かといって【スピッツには遠くから見てもわかるオーラがある】なんて言うつもりは無く。むしろ逆でオーラは全く無かった。白シャツでアコギを弾くマサムネは、そこらの下北バンドに見えなくもなかった。でも歌声が凄いんだよね。実際の距離よりも、凄く近くで歌っているような感じがした。今日は声もよく出ていたと思う。40歳を越えて、あのハイトーンが二時間半きちんと出るっていうのは本当に凄いよ。プロフェッショナルとはこういうことを言うんだろう。

あと何が良かったって「普段のライブと変わらなかった」ところ。そんなに回数見てるわけじゃないけど、一応(ほぼ)ワンツアーで一本は見ている者から見ても、本当に「いつものスピッツのライブ」だったと思った。一番新しいアルバムを中心にした選曲。それに過去のアルバムの定番曲、シングルちょっと、ちょいレアな曲1、2曲。あくまでアルバムのツアーという意識。記念碑的なアリーナライブじゃなくて「見れない人がいっぱいいるからアリーナでやりました」というのをきちんと守っている。ちゃんと「普段のライブを見せた」っていうことに凄く意義があると思った。ここで普段と違うライブをやってしまうと、(恐らく多数いたであろう)この日ようやくスピッツのライブを初めて見れた人にとって意味が変わっちゃうのかなあと。「遂にスピッツのライブを見れたけど、実は普段のライブと違いました」って後から知ったらヤじゃない?

まあ、完璧に普段と一緒だったかというと実はそうでもなく、普段よりちょっとだけシングル曲が多かった。でもこれは「いつもよりチケット代が高いからちょっと曲を多くしよう」っていうだけだと思う。そこで「(普段のツアーだったら)この中から全部じゃなくて何曲かやろう」というシングルをガシガシやった。それだけだと思う。そこで「過去のアルバム曲を増やそう」「余りやらないシングルをやろう」という選択肢を選ばなかったのは賛否両論あると思うけど、俺はそこが凄くいいと思った。

で、その一方でレア曲(という定義が難しいけど)もきちんと1曲は入れているというもの良かった。(今回は「ハニーハニー」がそれだと思うんだけど、どうだろう?)

定番曲も凄い良かったんだよね。「8823」やったら次は「俺のすべて」かな、とかもうわかってる訳じゃん。わかってるくせに、その2曲がものすごいグッとくるんだよね。ちょっと泣きそうになったもの。

あと「ロビンソン」。ロビンソンが14年前の曲っていうのにまず衝撃を受けたけど、40越えた今も14年前と変わらぬハイトーンを聴かせるっていうのがさあ。俺、本当に鳥肌立ったよ。まさかロビンソンで鳥肌たつなんて思わなかった。本当に「瑞々しい」って思ったんだ。14年前の曲なのに。凄いよ、マジで。

テツヤが「これからも色々なスピッツを見せるけど、『何だ結局スピッツじゃん』って言われると思う。それはそれでいいこと」みたいなことを言ってたけど、本当にそうだなあと思った。今回も終わってみればいつものスピッツでした、っていうね。本編ラストは新しいアルバムの曲だったし、アンコールは1回だけで、最後が「春の歌」という『シングルだけどそんなに盛り上がる訳でもない』曲で。途中途中で「今日はシングル多いねえ」と思ったけど、最終的には「アリーナライブを見たなあ!」っていう達成感(?)が無かったという。逆に凄いわ、それ。

本人たちは「最初で最後かもしれないけど」と言っていたけど、またアリーナでやってほしい。もちろんホールにこだわるのはそれはそれで構わないけど、アリーナでも定期的にライブをやって、それが「普段と変わらないライブ」であってほしい。スピッツはそれが出来るバンドだ。

【セットリスト】

  1. ルキンフォー
  2. Na・de・Na・de・ボーイ
  3. けもの道
  4. スパイダー
  5. 不思議
  6. 点と点
  7. チェリー
  8. 砂漠の花
  9. ハニーハニー
  10. モリーズ・カスタム
  11. 恋のうた
  12. P
  13. ロビンソン
  14. ネズミの進化
  15. 夜を駆ける
  16. 僕のギター
  17. トンガリ'95
  18. 8823
  19. 俺のすべて

  20. 〜ENCORE
  21. 群青
  22. 空も飛べるはず
  23. 春の歌